FCによる誤った意思決定(その1)事業採算判断

Ia ora na!
財務会計の基本であるFC(全部原価計算)。
実は、これをベースに経営の意思決定をすると、数々の間違いを犯してしまうんです。
それも致命的な間違いを・・・
今回は、そのひとつについて。

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今日、実際にクライアントであった話です。
ク:「これってどう判断したらいいんですか?」
私:「何ですか?」
ク:「新規事業について、親会社から言われているのですが・・・」
  「全体の利益率よりも新規事業の利益率が低くなっている。新規事業は儲かっていないのではないか?本当にやるべきなのか?って」

資料を見させていただくと、事業別での新規事業の粗利率が全体の粗利率よりも確かに低くなっています。このことから、新規事業が全体の粗利率を押し下げており、新規事業を続けていくことに疑問符がついたのです。

これを見て、私はすぐにピンときました。
「大丈夫ですよ。新規事業は続けるべきです。自信をもって進めてください!」
さて、なぜ私はこのような判断ができたのでしょうか?
勘?経験?度胸?
いいえ、科学的根拠に基づいて判断しました。

実は、上記の社内資料とは別に、私はDC(直接原価計算)ベースでの事業別収益管理をしていました。
それによると、新規事業の限界利益率は、全体の限界利益率よりも高いのです。
しかも、これまでの分析で価格を上げられるポイントを見つけており、その結果、毎月毎月収益性が改善している状況でもありました。
そのため限界利益額においても、全体の中で大きなウェイトを占めるまでになっていました。
だから、私は続けるべきと判断したのです。

それではなぜFCベースの粗利率は低かったのでしょうか?
それには、2つの理由があります。
・ひとつは、原価人件費、原価製造経費の配賦の仕方、基準の問題
・もうひとつは、(どちらかというとこちらの理由が大きい)減価償却費の負担が大きい問題
新規事業のため、設備投資により既存事業よりも減価償却費負担が重くのしかかり、粗利額が少なく(粗利率が低く)なっていたのです。
これは製造業でよくあるパターンです。
せっかく設備投資したのに、原価が高いからそれ用の仕事が取れず、逆に、償却が終わった古くて効率が悪い設備でいつまでも仕事をするという可笑しな現象。

もし今回のことを知らずに、間違った意思決定をして新規事業を止めてしまっていたら・・・
これまでの投資が無駄になるどころか、自社の経営革新、事業構造変革の芽を自ら摘み取ってしまうことになっていました。
このことから、経営の意思決定にはいかに数字的根拠が重要か、しかも“正しい(=科学的・数学的)”数字が必要かを理解していただけたと思います。
FCによる誤った意思決定はこれだけではありません。
今回はその1。また不定期にブログに書いていきたいと思います。

今回の話は、会計をあまり知らない方には、ちんぷんかんぷんだったと思います。申し訳ありません。
もしかしたら会計を勉強している人でも理解できないかも。私も最初そうでした。
しかし、MG(マネジメントゲーム)研修を受けると、会計知識ゼロでも、驚くほど理解できるようになります。
MG未経験の方、物は試し、ぜひMG研修を受けてください。
「経営に必要な」会計が身につきますよ!!

「事業の採算判断をFCでしていませんか?」

それではまた。
Mauruuru